Arva evo5
昨冬と今冬の雪崩トランシーバーのトレーニング時に、
この機種を持っている方が数人いました。
色々な雪崩トランシーバーの機種があり、良しあしがありますが、
このArva evo5… 雪崩ギアに全くなじみがない方が、サイト上の説明を読むと、
とても魅力的に感じます。
が、実際に使用するならば、
この機種の機能や特性を把握しておく必要があるでしょう。
evo5に関する、実際の使用後のフィードバックや感想をネット検索しても、
なかなかありません。
ここでは、Mountain Flowの雪崩サーチのトレーニング時に、
実際にevo5ユーザー達に発生したことの観察をもとに、私が思う注意点を記載します。
もちろん、使用環境(気温や電波干渉など)が変わると、違う反応が出ると思いますので、
この私のフィードバックがすべてではありませんので、あくまでもご参考までに。
■ Evo5の説明 (ネット上の説明より)
- 「EVO5」は、ARVA製史上最小のアバランチビーコンです。わずか11cm×7cmのサイズで、市場における最小のビーコンのひとつです。
重量もわずか165g、所持しているのを忘れる程軽量です。この小ささにも関わらず、大型モデルにも引けを取らない性能を発揮し、
探索距離は50m幅、マーキング機能に加え、スマートフォンを始め他の電子機器との干渉管理にも優れています。
二次雪崩の際の発信モード自動復帰機能も備え、セキュリティは万全のレベルにあります。
- またグループチェックとUターンインジケーターが、使用をより簡単確実にしています。
「EVO5」は、直感的で簡潔な操作を可能にさせるエルゴノミックデザインを念頭に開発され、3
ポジションのスライダ、大画面およびマーキングボタンにより探索時の操作性が大幅に向上しました。
- 特徴:
・捜索受信幅(横)/50m
・グループチェック機能/グループメンバーのビーコンの送信周波数とパワーをテストできる
・複数捜索時のマーキング機能
・複数埋没者アイコン表示機能(1人・2人・3人)3人以上の場合は「+」で表示されます
・3本アンテナ/信号を見つける可能性を高め、詳細な検索の精度を高める
・デジタル検索は、救助者をより効率的に埋まった場所に導きます
・オートテストにより、デバイスは自動的に診断を実行し、全ての主要機能が適切に動作していることを確認します
・バックライトスクリーン/偏光メガネをかけたままでも見やすいバックライトディスプレイ
・二次雪崩防止としてタイマー(8分)によりアラームが鳴り、自動復帰になります。
・電波干渉管理/信号への干渉がある場合、自動的に20mの幅に捜索幅が狭められ精度を保ちます
・Uターンアラーム/間違った方法へ歩くと、アラームが鳴ります
・コンパクトサイズ (111mm × 72mm × 20mm)
・重量(電池込)/ 165g・単三アルカリ乾電池1本使用・バッテリー寿命:発信時/200時間
■ フィードバック
上記の説明であるように、
どのサイトを見ても、Evo5の売りは、
「コンパクト性」
「軽量」
「最低限必要な機能」
「比較的安いプライス」
「エントリー(初心者向け)」
となっています。
実際、過去数回の雪崩サーチのトレーニング時に、
EVO5ユーザー達に発生したことの観察をもとに私が思うことは、、
初心者向けではなく、どちらかというと、「Light&Fast」志向の、雪崩サーチに熟練した玄人向け。
最低必要限の機能は付いているけど、熟知していないと、使いにくい、逆に惑わされるレベル。
「あなたは、SEARCHしなくてよいけど、SENDだけはしといてよ」という、
BC/雪山登山初心者交じりのパーティーのリーダーが初心者におすすめしそうな機種。
ですが、この考えは、良くない。確かに、初心者がサーチに関わらない方がよい、
関わらなくてよい状態であったとしても、「自動復帰モード」「電源オフ」の方法が、
シンプルでないため、緊急時に、初心者が仲間と離れた状態の中、自分で判断して、
正しく操作できるか? 不安が残る機種。
特に、初心者へは、おすすめできない機種。。。だと思います。
理由として ↓
1.サーチ時の矢印(方向)が、定まりにくい=捜索時間がかかる。
同じ位置立ち止まっていても、早いスピードで、矢印の向きが変わる。動いていないのに、Uターン記号も現れたり、音も距離数も矢印も消えることもある。
埋没雪崩トランシーバーを、シンプルに埋めた(縦埋め、複数埋めをしていない)としても、矢印(方向)が定まりづらい。とても繊細に動く。
特に距離が離れていればいるほど、矢印は定まらず、シグナルキャッチの時点で、だいたいどこに埋まっているかをメンタルマップで作れない初心者にとっては、
忠実にフラックスラインを示す矢印に誘導されてゆくのがシンプルだが、それが大変困難。
結局、ユーザーは、身動きがとれずに止まってしまう状態。
もし、雪崩走路やデブリの方向、最初にゲットしたシグナルと距離数より、メンタルマップを作れる熟練者は、
その矢印を無視して進むことができるが、初心者にとっては、大変難しい。
この初動で一番大事な、矢印(方向)がさだまらない、シグナルをキャッチして、素早く導かれないというのは、evo5の一番のデメリット。
海外サイトの、14機種の雪崩トランシーバー比較でも、evo5のサーチスピード(特にシグナル&コースサーチ)は、ワースト1。
2.電池一本のため消耗が早い
-2~3度の環境下で、約2時間(実際のサーチ時間は、累計1.5時間ほど)で、
国内産の新しい電池(スタート時99%・・そもそも3桁表示できない)が、40%に減少。
海外のあるサイトでは、SEARCHの電池持続時間は、40時間となっているものありましたが、
気温が低い環境では、実際のSEARCHの電池消耗は、やはり電池3本機種よりは早い。
他のArva製品とちがい、電池の出し入れが、コインなどを使わなくてもできる蓋に改良されているが、
ツアー中や、捜索中に電池を交換するのは、不適切。
説明では、「SENDは、200時間持続」するとあるが、これも実際に低温時で実験してみたいと思います。
3.付属のハーネスは、ウエストストラップで、ポケットイン スタイル
雪崩トランシーバーをポケットに入れる人もいるが、そのデメリットを把握しておくこと。
別売りのHOLSTER(ハーネス)を購入した方が、良さそうですね。
4.自動復帰モード
二次雪崩対策として、タイマー(8分)で、自動復帰される。
ただ、ビープ音が4回ほどなるだけで、気が付かないこともある。
実際のトレーニングでは、気が付かないうちに、自動復帰モードになっていました。
他メーカーは、もっと大きな音で、長くビープ音がなるため、本人以外も気が付くほどだが、
evo5の自動復帰モードに戻る際のビープ音は、短く、目立たないため、必死な状況では、本人すら、気が付かない時がありました。
自動復帰モード機能は、evo5においては、8分。無効にすることはできない。
モーションセンサーがないため、ユーザーが動いていても(静止していても)8分経つと、SENDINGに自動復帰されます。
8分、、ですと、シンプルな埋没の場合でも、シャベリングをしている最中とかのタイミング。
掘り出しの音もするし、皆必死の状況で、evo5の自動復帰モードへの警告音は、、、見逃しやすいかも。
この時点で、埋没者全員がサーチされている状況だと、問題ないかもしれませんが、
サーチ中だと、大変な状況になりますね。
5.マーキングボタンが押さされやすい。
サーチ時、雪崩トランシーバーの持ち方に気をつけなければ、
たやすくマーキングボタンが押さされます。
(上の画像のように)
「操作性は、良い」。。。が、ちょっと良すぎかも。
実際のトレーニング時に、サーチ中におささってしまい、
プローブヒット前にマーキングしてしまったユーザーあり。
6.SENDING時のLEDライト点滅がない。
BC出発前に、自分の雪崩トランシーバーがSENDになって発信しているか?
他機種ですと、LEDライトが点滅しているので、自分で確認できます。
evo5は、それがないので、SENDにしている確認を見落とさないよう、要注意。
グループチェック機能は、ついているが、evo5ユーザーは、断然、される方。。。がよさそうですね。
7.電源OFFの仕方がシンプルじゃない。
スライドをOFFにしただけでは、電源が切れず、さらにフラッグボタンを押さなければ、OFFにならない。
これは、勝手にスライドして、山行中、動いている間にOFFにならないように考えられている機能でしょうが、
実際の現場で、evo5ユーザーが、雪崩で埋没し発見されたとしても、
他の人が雪崩トランシーバーの切り方を知らなければ、または、OFFにスライドして、
電源を切ったつもりでいても、複数埋没者がいた場合、現場を混乱させる原因になり兼ねない。
Evo5ユーザーと行動を一緒にするならば、OFFの仕方を共有しておくなど、注意が必要。
上記、あくまでも、私の考察です。
もし、自分のパーティーにevo5ユーザーがいるならば、この特性に気を付けておくと良さそうですねー。
私だったら、BCエントリー者が、パウダー時季に、これを着けてきたら、
「申し訳ないのですが~、こっちの機種を使ってください~」とマムートを強制レンタル。。
するかも。
色々な機種が出まわっています。
人同様、雪崩トランシーバーも性格(特性)がありますので、
色々と勉強して、自分にあった雪崩トランシーバーに会えますように。